<特集・UFCがやってくる!!(3)>

 総合格闘技は、紀元前648年の古代五輪で導入された打撃と組み技の格闘技「パンクラチオン」が起源といわれる。近年まで日本をはじめ、世界各地でさまざまな大会が行われてきたが、中でもUFCは有料の衛星放送やケーブルテレビの中継映像などを150の国や地域に22の言語で配信し、5億世帯で視聴可能なメジャー興行へと成長した。

 WOWOWの中継で実況を担当する高柳謙一アナウンサー(51)は「スポーツのリアリティーを求めながら、エンターテインメントとしての質も高い。マッチメークを含めて、常にファンや視聴者を意識し、イベントに統一感がある」と話す。何より観衆を熱狂させる演出は「極度の緊張感」と殺伐とした試合後に味わう「解放感」。名物司会者やオクタゴンガールの存在も欠かせない。

 UFCには現在、26カ国にルーツを持つ約200人の選手が在籍する。他団体に参戦できない独占契約で、試合内容が伴わなければ即解雇。高柳氏は「選手はファンの記憶に残る戦いをすれば評価されることを意識し、思い切った言動に出る。だからこそ、シビアな環境を見る側も共有できる」という。1月のブラジル大会では、フェザー級王者ジョゼ・アルドが防衛直後にケージを飛び出し、観客席へダイブ。もみくちゃにされながら喜びを分かち合い、UFCの一体感を象徴するシーンとなった。

 高柳氏は「格闘技の造詣が深い日本のファンとUFCが化学反応すれば、新たなムーブメントが起きるのでは。エクスタシーの世界を伝えたい」と期待し、オクタゴンサイドでマイクに向かう。【山下健二郎】

 ◆高柳謙一(たかやなぎ・けんいち)1960年(昭35)4月24日、東京都板橋区生まれ。立大経済学部を卒業後に朝日放送(ABC)入社。高校野球やラグビー、駅伝などスポーツ中継を担当した。91年のWOWOW開局に伴い移籍。97年4月にフリーとなって以降も、同局でUFCやボクシングなどの格闘技や海外スポーツで実況を務める。元高校球児で趣味はゴルフ、水泳、フルマラソン。「走って話せる鉄人アナ」がモットー。