旧PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(35=ロシア)が21日(日本時間22日)、プロ総合格闘技からの現役引退を正式に表明した。同日、母国ロシア・サンクトペテルブルクで行われた、M-1グローバルの同級ワンマッチでペドロ・ヒーゾ(38=ブラジル)と対戦。1回1分24秒にレフェリーストップのTKO勝ちを収めたが、試合後の会見で「その時が来た。このスポーツから引退する」と去就を明らかにした。

 ヒョードルは00年5月にリングスで総合格闘技デビュー。02年からPRIDEに参戦して翌年にアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラからヘビー級王座を奪った。その後もミルコ・クロコップやマーク・ハントら強豪を相手に王座防衛やGP制覇を達成して「60億分の1の男」「人類最強の男」と呼ばれ、重量級の世界的なスターとして君臨した。

 だが、近年は10年6月~11年7月にかけて、米総合格闘技ストライクフォース(SF)で3連敗を喫するなど衰えが見え始めた。M-1グローバルが水面下で進めていた世界最高峰UFCとの契約交渉も不調に終わり、ヒーゾ戦に進退をかける考えを示していた。

 この日は左右のフックでダウンを奪い、続けざまにパウンドを浴びせる圧倒的な強さで快勝。プーチン大統領からリング上で祝福を受けたが、ヒョードルは「家族のために、もう戦わない。(SFで敗れた)ファブリシオ・ヴェウドゥムとも再戦しない。いいオファーも来ないので引退する」と決意は固かった。

 日本では、昨年末の「元気ですか!!大晦日!!2011」(さいたまスーパーアリーナ)の石井慧戦がラストマッチとなった。震災の被害に心を痛め「愛する日本のために」と推定2500万円の格安ファイトマネーで出場。1回KO勝利でファンを沸かせた。ヒョードルは今後も「サンボの世界選手権には出場したい」と格闘技界に携わる意向だが、実力健在のまま、第一線の表舞台に別れを告げた。

 ◆エメリヤーエンコ・ヒョードル

 1976年9月28日、ロシア出身。柔道家から総合格闘技に転向。00年リングスでヘビー級、無差別級王者に。02年6月にPRIDE参戦し、03年に同ヘビー級王者。04年にノゲイラと2度戦い、同級GP制覇。PRIDE消滅後は米新興団体アフリクションに参戦し、WAMMA王者に就く。09年11月にストライクフォースに参戦。戦績は35勝4敗1無効試合。182センチ、106キロ。