高校生史上初のアマ7冠を獲得した井上尚弥(19)がプロ転向し、大橋ジムに入ることが2日、都内で発表された。高校1年で高校3冠、同3年でアマ最高峰の全日本選手権を制した逸材。プロでは、日本初の世界統一王者・井岡一翔(23)を超える国内最速6戦目での世界王座奪取を目標に掲げた。9月のプロデビュー戦では、いきなり東洋太平洋、日本ランカーと対戦予定。師匠の大橋秀行会長(47)からは「怪物」と例えられ、今後のボクシング界を背負う存在として期待された。

 恐るべき10代が、プロのリングに殴り込む。高校生で史上初のアマ7冠を獲得した井上は会見で「井岡さんの記録を塗り替えたい」と国内最速プロ6戦目での世界王座奪取を宣言。続けて井岡との直接対決について「プロの12回戦では体力的にまだきついかもしれないが、アマと同じ3ラウンドなら自信がある」と堂々と言い切った。

 アマ7冠の実力に偽りはなく本物だ。中学時代からプロ選手ともスパーリングを行ってきた。先月には井岡と激闘を繰り広げた八重樫とも5ラウンドを戦い、3ポイント差で勝利。複数の世界ランカーをダウンさせたこともある。強さを肌で知る八重樫は「パンチ力、スピード、フィジカルの強さは10代とは思えない。井岡を超える逸材だし天才です」と証言した。

 本物志向でもある。大橋ジムとの契約では、本人の希望で「強い選手と戦う。弱い選手とは戦わない」と異例の条件をつけた。

 井上

 穴の王者に勝って、複数階級制覇を狙うことはしたくない。強い王者に挑んで、その階級の最強を証明する。その上で5階級制覇を目指す。井岡VS八重樫のような熱い試合で、ボクシングファン以外の人にも伝わる試合をしていきたい。

 今後は「井岡超え」のプロ6戦目での世界王者を目指し、エリート路線を歩む。10日に東京・後楽園ホールで日本ライトフライ級王者でWBC同級8位の黒田雅之(川崎新田)と異例のプロテストを兼ねた公開スパーリングを敢行する。9月のプロデビュー戦では、東洋太平洋か日本ランカーと対戦して、ランク入りを狙う。

 先月、日本人同士の初の世界団体王座統一戦が大成功に終わった。話題性だけで盛り上がる時代は過ぎ去り、今は真の戦い、本物の強さが求められる。大橋会長は「これからは本物の時代。井上は本物の中の本物。例えるなら怪物です」と、大きな期待を寄せた。【田口潤】

 ◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。小学1年でアマ選手だった父真吾さん(40)の影響でボクシングを開始。相模原青陵高1年時でインターハイ、国体、全国選抜と3冠達成。3年時には国際大会プレジデント杯、最高峰の全日本選手権を制覇し、アマ7冠。アマ通算成績は75勝(48KO・RSC)6敗。163センチの右ボクサーファイター。家族は両親と姉晴香さん(20)と弟拓真さん(16)。高校1年の拓真さんもすでに高校2冠を達成した。