高校生初のアマ7冠を達成した井上尚弥(19=大橋)が、世界王者経験者との練習でプロ2戦目(1月5日、東京・後楽園ホール)となるタイのライトフライ級王者ガオプラチャン・チューワッタナ(35)戦に弾みをつける。井上は10日、横浜市内の大橋ジムで元WBA世界ミニマム級王者八重樫東(29=大橋)とのスパーリングを公開。元王者を圧倒した。12日には、元WBAスーパーフライ級王者名城信男(31=六島)とのスパーリングを予定。2階級上の相手にも「パンチをもらわなかったら関係ない」と対戦を心待ちにした。

 19歳のルーキーが、元世界王者を手玉に取った。5回のスパーリング。鋭い左ジャブで八重樫の動きをけん制し、ロープに追い詰めると連打。八重樫の反撃を許さない、機関銃のようなパンチが、顔面、アゴ、ボディーへと吸い込まれていく。最終5回には、残り15秒間、両者が足を止めて激しく打ち合った。

 大橋会長は「採点するなら八重樫が負けている。井上はデビュー戦が終わってからすごく伸びている」と、興奮を隠しきれない様子だ。接近戦でアッパーをもらう課題を、顔の位置をずらし、グローブをアゴの下に置くことで克服。サイドにステップしながらパンチを打つ、ドネアを参考にした「ドネアステップ」を八重樫との練習で披露した。

 デビュー2戦目が決まって以降、毎週のように練習相手を務めている八重樫は「ダメでした」と苦笑。井上の印象を「パンチの打ち終わりがない。もう終わったかなと打ち出すと、カウンターを食らう」と脱帽した。統一戦で敗れた前WBC・WBA世界ミニマム級統一王者の井岡一翔と比べても「持っているものが違う」と怪物のすごさを絶賛した。

 そんな井上に、再起を目指す名城からオファーが届いた。明日12日に、大橋ジムでスパーリングを行う。来月5日のプロ2戦目を前に、八重樫、そして階級が2つ上の名城と元世界王者との腕試し。新人としては異例のことだが、井上は「前からやりたいと思っていました。すごい勉強になるし、他のジムの人なので思い切っていけます」と意欲満々。世界王者の経験を吸収して怪物はさらにパワーアップする。【桝田朗】