引退を表明している小橋建太(45)が「感謝」でノアに別れを告げた。今年最後のノアの試合で、リングに上がることはなく、ファンとの握手、サイン、写真撮影に応じて会場を後にした。「ノアの小橋建太」として、ファンと直接、触れ合うのはこれが最後。「ファンには感謝の気持ちしかない」と言って、公式にあいさつをすることなく静かに幕を引いた。今年いっぱいで退団する秋山準(43)ら5人も、最後の試合を終えた。

 マイクも、涙も、花束も、小橋コールもなかった。24日、小橋は会場に隣接した事務所のテレビモニターで、仲間の試合を見守った。「今、自分が試合をできないもどかしさがある。でも、気持ちは毎日プロレスラー。燃え続けている」と言いながら、リング上で戦う選手たちこそ主役であるべきと配慮した。試合前に行われた餅つきでは「みんなが喜んでくれるだろうから」と、秋山をパートナーに指名して息の合ったところを見せた。

 試合前、休息中は、この日のために急きょ100枚用意された、イメージカラーのオレンジTシャツにサインをした。ファンと直接、言葉を交わし、握手をして、共に写真に納まった。ほかにもタオル、パンフレットと300人以上のファンと写真に納まり、言葉を交わし続けた。

 「ファンに対しては感謝の気持ちだけ。けがの時、病気の時、試合会場に来てじかに、そして手紙やメールでも激励の言葉をもらった。ファンの応援があったからプロレスラー小橋建太でいられた。頑張れた」と色紙に「感謝」としたためた。

 ノアとの選手契約は今年いっぱい。来年1月1日からはフリーとして、公約した「残り1試合だけ」の、来年5月にも行われる引退試合に向けてトレーニングを積む。秋山ら5選手の退団も重なり「小橋さんがいなくなったら、ノアはどうなっちゃうの」と涙ぐみ、握り締めた手を離そうとしない女性ファンに、優しく「あと1試合、引退試合があるから、見に来てな」と語りかけた。

 ファンが直接、ノアの小橋と接することができるのは、この日が最後。駐車場にまで追いかけてきたファンの1人1人と丁寧に握手して車に乗り込んだ。来年以降については、小橋らしく「毎日練習する。イベントとか引退試合とか、情報を発信するためにフェイスブックを始めてみるよ」。そして、ノアの小橋のラストを見守るために駆けつけた、妻で歌手のみずき舞(38)、母親とともにクリスマスを祝うために静かに会場を後にした。【小谷野俊哉】