石井慧(26=I

 DASH

 RHINO)が元UFC王者を下し、2年ぶりに勝った。身長23センチ差、体重35キロ差の巨漢ティム・シルビア(36=米国)と総合ルールで激突。1回にグラウンド状態から右ヒジ攻撃で敵の右目尻カットに追い込み、テークダウンも2度奪った。2回以降も攻撃の姿勢を貫き、3-0の判定勝ち。13年は体重を120キロ以上に増量し、IGFでの総合戦出場を熱望。「二足のわらじ」で柔道でも16年リオデジャネイロ五輪に向けて米国で柔道大会に出場を続けることを明かした。

 愚直に攻めた。ゴングと同時に石井は突進した。「殴られても相手の顔を見て何が何でも勝つという気持ちでした」。シルビアをコーナーに追い詰めてテークダウンを奪った。拳、ヒジで元UFC王者の顔面を攻撃。右目尻カットに追い込んだ。2回以降は守り続ける敵を仕留められずに体力を消耗。判定勝ちが決まると、酸素欠乏の状態で倒れ込み、バックステージで動けなかった。10年のレバンナ戦以来、2年ぶりの勝利は、精根尽き果たしつかみ取った。

 3回を通じて3度もシルビアの大流血によるドクターチェックが入った。1回3分すぎには腕固めに入った状況で試合が止められ「止められなかったらどうかな…でもルールなので」と言葉をのみ込んだ。ただ一方で「切羽詰まって、これからどうやって生きようか考えた時期もあったので。本当に勝てて良かった」と安堵(あんど)の表情も浮かべた。

 2012年は2度の試合中止で、11年大みそかのヒョードル戦以来、1年間、試合ができなかった。苦しんだ時期は長年のファンだった歌手の林明日香(23)の存在に支えられた。夏以降、知人を通じて知り合って交流を開始。電話やメールで悩みを打ち明けたという。「あの励ましがあったから格闘技をやめようとは思わなかった」。12月28日には林のライブに行き、再び激励された。気持ちを高揚させてリングに臨めた。

 今年は格闘技、柔道の両方で本格的に動きだす。106キロの体重も120キロに増量し、全米柔道体重別に出場予定。2競技で世界のトップを目指す。「できればIGFで総合の試合をやってもらえたらうれしい」と石井。元UFC王者撃破の自信を胸に石井が「二足のわらじ」で逆襲に転じる。【藤中栄二】