<ノア:小橋建太引退試合>◇11日◇日本武道館◇1万7000人

 小橋建太(46)の引退試合で8人タッグのチームを組んだ秋山準(43)が、小橋魂の継承を誓った。全日本時代からの後輩として、タッグパートナーとして、20年以上の時間を共に過ごしてきた。98年に小橋が結成し、守り続けた「バーニング」。ファンを熱狂させるバーニングの炎は、秋山ら後輩たちの心の中で大切に継承される。

 試合後のリング上で、20年の思いを込めて抱き合った。秋山はうっすらと目を潤ませ「試合直後はリング上でしんみりとした」と振り返った。感傷に浸っただけではない。「バーニングとして教えられたことをやっていく。小橋さんはいつもその日の会場の一番を目指していた。僕たちもそれを目指していく」と決意を語った。

 小橋の姿に胸を熱くした。何度技を受けても、歯を食いしばり、立ち上がり、相手に立ち向かっていく。満身創痍(そうい)の体で繰り出した魂のムーンサルト。会場を包んだ熱狂に「バーニング」の本質を教えられた。

 秋山は、この試合に集中するための環境を自ら整えた。4月29日、全日本のチャンピオンカーニバルを初制覇。優勝の喜びとともに「これで鉄人の所に心おきなく行けます」と引退試合に照準を合わせ、リングに上がった。特別な思いを持って臨んだ小橋の最後の試合で、偉大さをあらためて胸に刻んだ。「小橋さんらしい最後まで全力の試合。ファンの人のためにやってきた小橋さんが見えた」。

 後輩として、タッグパートナーとして、ライバルとして小橋と多くの時間を共有してきた。自然に、小橋のプロレスラーとしての思いを引き継いでいく覚悟が強まった。「バーニングは小橋建太がずっと守り抜いてきたもの。その名前だけは続いていってほしい。俺がいなくなったとしてもそういうチームであってほしい」。小橋を誰より知る秋山だからこそ言える、特別な思いだった。

 現在のバーニングは潮崎豪(31)金丸義信(36)鈴木鼓太郎(34)青木篤志(35)に秋山を加えた5人。熱いファイトでファンを魅了してきた小橋の背中を見て育ってきた男たちが、また新たな伝説を作り出していく。【奥山将志】