<プロボクシング:WBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京・大田区総合体育館

 同級王者八重樫東(31=大橋)がKO防衛で、夏の大一番へ前哨戦を制した。同級8位オディロン・サレタ(28)との3度目の防衛戦。独特のメキシカンのリズムにてこずったが、9回に右フックから連打し、最後は右アッパーで2分14秒KO勝ちした。次戦は前座で39戦全勝33KOとした、同級1位のロマゴンことローマン・ゴンサレス(26)との激突となる。

 八重樫は8回の公開採点で2-0と逆転した。大橋会長は「韓国ファイトでいけ」と指示。直後の9回に接近戦で「たまたま」という右フックがさく裂。サレタが腰を落としたところへ、ここぞの連打を浴びせる。最後は右アッパーでダウン。相手は立ち上がったが戦意なく、10カウントとなった。

 V3を果たした直後、ロマゴンがリングへ上がってきた。「いい仕事をした」と左手を上げられた。八重樫は観客に向かって「やってもいいですか?」と問うと、大歓声が上がった。前哨戦をクリアし、次は無敗強打者と一大決戦が正式に決まった。

 世界戦では3年ぶり2度目のKO勝利だった。4回の公開採点では0-1からメキシカンに3連勝。「足も動かず、メキシコのリズムに苦しみ、試行錯誤した。ボディーは効いたが、最後までいくと思った」。反省しきりだった。

 2月の防衛戦発表で、次戦相手にロマゴンを指名した。練習は大一番を想定プランでスタートしたが、夢で負けるシーンも見たという。3日後には「練習に集中できない。今はサレタのことだけを考えたい」と松本トレーナーに訴えた。

 V2までと比べて、くみしやすし、楽勝との評判もあった。控室ではロマゴンの試合になるとモニターも消した。目前の敵に集中したつもりも、次戦を表明した影響が出た。「頭にいろいろちらつき、どっか集中しきれなかった。どっちが勝つか分からないような戦いでないと苦手」と振り返った。

 ライバルは39連勝した後、リングサイドで八重樫をじっくり見ていた。八重樫は「次は死に物狂いでやる。可能性ある限り、努力は実を結ぶと体現する。逆転満塁ホームランで」。今回は主役を井上に譲った。次は堂々たるメーンの主役として、ニカラグアの怪物退治に挑む。【河合香】

 ◆八重樫東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日、岩手・北上市生まれ。黒沢尻工3年で総体、拓大2年で国体優勝。大橋ジムから05年3月プロデビュー。06年に東洋太平洋ミニマム級王座獲得。07年の7戦目でWBC世界同級王座挑戦は判定負け。11年にWBA世界同級王座獲得。12年にWBC世界同級王者井岡と統一戦も判定負け。昨年2階級制覇。家族は彩夫人と1男2女。162センチの右ボクサーファイター。