30日のWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ(東京体育館)で、2階級制覇に挑む前WBC世界ライトフライ級王者井上尚弥(21=大橋)が27日、都内で行われた予備検診で11度防衛中の最強王者オマール・ナルバエス(39=アルゼンチン)と初対面した。2階級上げたことで、苦しんできた減量から解放され、肉を積極的に取る「攻めの食事」で体を作り上げてきた。万全の調整で、世代交代を掲げる大一番に臨む。

 井上の目には力があった。9月のライトフライ級王座のV1戦。同じ試合3日前の検診時は、顔色が悪く肌はかさかさで「口が乾いて、しゃべるのも嫌だった」とも言った。階級を上げ、減量が約3・2キロ楽になったことで、不安はなくなった。胸囲も約1・5センチ大きくなり「これまでで一番良いパフォーマンスが出来ると思う」と力強く宣言。初対面した王者の印象についても「想像以上に小さく見えた」と言い切った。

 自信の源は、練習と食事改革で作り上げてきたスーパーフライ級仕様の肉体だ。契約する明治の管理栄養士・村野あずさ氏は「体重を落とすための食事が、強い体を作るためのものに変わった」と話す。10キロの減量があったライトフライ級時には避けていた赤身の牛肉を積極的に食べ、プロテイン頼みではなく、食事から鉄とタンパク質を摂取。疲れにくい体を土台に、過去最多170回のスパーリングで仕上げてきた。

 これまでは試合2週間前から食事量を制限してきたが、今回は1週間短くなった。井上も「食事を取りながら、ぎりぎりまで練習が出来たのは大きい。前は減量で作った筋肉をそぎ落としていたが、今回は筋肉を保ったままリングに上がれる」と自信の表情だ。

 父の真吾トレーナーも「パワーは確実についた。ミットを受けていても石で殴られているような感覚から鉄の球のような感覚に変わった」と表現した。井上が「適正階級」で強さを証明する。【奥山将志】