亀田3兄弟の父史郎氏(44)がボクシング界から身を引くと表明した。12日、成田空港で「ライセンス返上の手続きを出した」と語った。同日、都内で行われた東日本ボクシング協会の理事会では、亀田ジムの五十嵐紀行会長(35)が協会員としての無期限活動停止などを記した書面を提出し受理された。同協会は今後、調査委員会を設置して亀田ジムを調査した上で同会長に処分を下すことになった。亀田ジムの活動は無期限停止となったが、ジム消滅の危機は回避。3兄弟は協会預かりの選手として活動することになった。

 ジム存続のため、3兄弟の将来のため、亀田側が起死回生の策を打った。12日(日本時間13日)にメキシコで行われるWBC懲罰委員会出席のため成田空港に姿を現した史郎氏は、先月27日以来初めて口を開いて謝罪し、こう続けた。

 史郎氏

 子どもらがボクシングできるようにするには、自分がボクシング界から身を引こうと思って決めました。今日、ライセンス返上の手続きを出してますので。子どもの横にはつけなくなるけど、いいおやじになろうと思います。

 史郎氏は東日本協会の協会員ではないため、処分は13日の日本ボクシングコミッション(JBC)の倫理委員会で最も重い「取り消し」となることが決定的な状況だった。その前に、無期限停止処分中のセコンドライセンス返上を表明し“自主廃業”の道を選んだ。

 五十嵐会長も先手を打った。この日に都内で開かれた東日本協会の定例理事会の冒頭、史郎氏の謝罪文と自らの活動停止を申し出る上申書を提出した。その内容は以下の通りだった。

 (1)同会長の協会員としての資格を無期限停止。亀田ジムの活動も無期限停止。

 (2)資格停止の解除に関してはすべて同協会に一任。

 (3)所属3選手(興毅、大毅、和毅)を協会預かりにしてほしい。

 (4)書面または協会会則に違反した場合、いかなる罰則にも異論を述べない。

 この理事会で、同会長には代表者不在でジム消滅となる「除名」処分が下る可能性が高かった。ジム存続のため、自らが無期限活動停止を申し出た。理事会に出席した19人の理事が満場一致でこれを受理。調査委員会を設置し亀田ジムを調査したうえで処分を下すと、方針転換した。同協会の大橋会長は「史郎氏が退くという文章も踏まえて、除名という意見はなかった」と説明。3兄弟についても「協会預かりの方向」との見解を示し、国内で試合を行うことが可能となった。

 一方、13日に倫理委員会を開くJBCは重い処分を科す姿勢を崩さなかった。安河内事務局長は史郎氏について「返上という規定はなく謝罪の一種ととらえる。軽くなるとかではない」と、従来通りライセンス取り消しの厳罰を下す方針。五十嵐会長についても「アクションがあったことは報告しています」とし、長期間の資格停止か、最悪の場合取り消しとなれば基本的にジムは消滅する。

 この日の理事会では処分が出ず、ひとまずジム消滅は回避した。13日の倫理委員会でも消滅を回避できたとしても、3兄弟の今後の活動へ障害は残る。大橋会長は「練習は今のジムではできない」とし、再発防止策や試合契約などについては「早急に考えたい」と話すにとどめた。あやふやな決着で先行きの不透明さが増した今、亀田家はいったい、どこに向かっていくのだろうか。【浜本卓也】