大相撲初場所(10日初日、東京・両国国技館)を休場する東十両9枚目時天空(36=時津風)が、悪性リンパ腫の治療で入院していると、師匠の時津風親方(元前頭時津海)が8日、明かした。昨年10月末から抗がん剤治療に専念。三役経験者のベテランが、病床から再起を期す。国技館では取組編成会議が開かれ、初日と2日目の取組が決まった。

 幕下への陥落が確実となる2場所連続休場の裏には、病との闘いがあった。時天空は昨年7月ごろから右脇腹に痛みを覚え、名古屋場所後に病院で「あばら骨のヒビ」と診断された。だが秋場所終盤には休場も考えるほどの激痛に襲われ、夜も眠れなかったという。知人の紹介で都内の病院で再度検査すると、患部に腫瘍が見つかった。さらに調べた結果「悪性リンパ腫」であることが分かった。

 報道陣に応対した時津風親方は「抗がん剤治療が必要ということで、今は治療に専念してます。聞いた本人が一番つらかったと思いますよ。毎年、人間ドックにも行っていたのに…」と、弟子の心情を代弁した。幸いにも早期発見で、昨年10月末から入退院を繰り返しながら治療中。141キロあった体重は15~20キロ落ち、副作用で髪の毛も抜けているというが「おかげさまで経過も良好なんで、良い方向に向いてきていると思います。全然普通に元気ですよ。歩くのも普通。昨日もしゃべりました。命に別条はない」(親方)。故郷モンゴルから両親も駆けつけ、面会でも明るい姿を見せているという。

 治療は4月ごろに終える見通しだが、体への負担を避けるために引退を強いられる可能性もある。時天空は進退について「治して土俵に上がりたい」と前向きに話しており、師匠と相談しながら決める方針だ。

 時津風親方によると、時天空は「いろんな病気で頑張って闘っている人もいるんで、その人たちのためにも一生懸命頑張って克服したい。ファンやマスコミの皆さんにはご迷惑おかけしますけど温かく見守ってほしい」と話していたという。

 経験豊富な3番目の年長関取でも、復帰の道は簡単ではない。だが、再び土俵で勇姿を見せるため、懸命の闘いを続けている。

 ◆時天空慶晃(ときてんくう・よしあき)本名同じ。1979年9月10日、モンゴル・トゥブ県生まれ。柔道経験者。00年3月にモンゴル農大を休学し、東農大へ留学。02年名古屋場所の初土俵から序ノ口、序二段、三段目と昭和以降3人目の3場所連続優勝。22連勝は史上4位タイ。04年春場所で所要10場所で新十両。同名古屋場所で新入幕。07年春場所で新小結。14年1月に日本国籍を取得し、同5月29日付で年寄名跡「間垣」を取得した。家族は両親と姉、妹。185センチ。

 ◆悪性リンパ腫 体中を巡るリンパ球ががんに変異する病気。代表的な症状は主に首やわきの下、脚の付け根などリンパ節のしこりや腫れ。自覚症状がなく、判断が難しいため進行してしまうことも多い。腫瘍が急速に大きくなり、痛みや発熱を伴うことも。倦怠(けんたい)感や体重減少などの症状が見られることもある。手術ではなく、抗がん剤による治療が一般的。