横綱白鵬(31=宮城野)が、大関稀勢の里(29)との全勝対決を制した。わざと相手得意の左四つで組むと、激しい攻防の末、下手投げで13連勝。大一番で綱とりの可能性もある大関の力を試すようにして、綱の貫禄を見せつけた。早ければ今日14日目にも、自身の最多記録を更新する37度目の優勝が決まる。

 横綱になるには、まだ早い-。白鵬は、そう言わんばかりに力でねじ伏せた。13日目では過去最多58本の懸賞がかかり、満員札止めの館内は「稀勢の里コール」が地鳴りのように響く完全アウェー状態。立ち合いはあえて右張りから、稀勢の里が得意とする左四つで応戦した。押し込まれて俵に右足もかかったが、慌てない。相手十分の体勢から下手投げを2度狙い、バランスを崩したところを投げ飛ばした。

 「全勝力士に勝った、倒したというのは素直にうれしい。相撲の神様が、まだ私のほうに少し、ほほ笑んでくれたとしか思えない」。因縁の相手との3年ぶりの全勝対決を制した喜びを、そう表現した。

 一見、ギリギリの勝利に見える。だが、完勝だった。左四つで組んだ理由を「勝つなら勝ってみい、それで横綱になってみろ、という感じ」と言った。「今日の一番は『勝っていいんだよ』という感じだったんだけど、勝たなかったからね。何かが足りないんだろうね。強い人が大関になる。宿命のある人が、横綱になる。横綱白鵬を倒すのは、日ごろの行いが良くなければ。それしか思いつかない、今は」。力を試しながらはね返す貫禄勝ちだった。

 これで通算1000勝まで残り15勝とし、目標とする横綱10年目を迎える名古屋場所での大台達成の最低条件も満たした。そして早ければ今日14日目にも優勝が決まる。「集中して、今日みたいな良い相撲を取りたい」。死角はない。【桑原亮】