大相撲の西岩親方(39=元関脇若の里)が2日、都内で創業400年を誇る化粧品メーカー「柳屋本店」の人財育成セミナーに招かれて「相撲の歴史と我が相撲人生」と題して、社員約80人を前に講演を行った。5月28日に断髪を終えてから“最初”の仕事。始めに、相撲の歴史から説明した。

 相撲は2000年以上も前に、野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹶速(たいまのけはや)が垂仁天皇の御前で相撲を取ったことが始まりとされる。そんな日本書紀の逸話を紹介し、2人が相撲を取ったことで「相撲発祥の地」とされる奈良県桜井市の相撲神社を、実際に訪れた話も明かした。

 そこから時は流れ、自らの相撲人生に触れて、あこがれだった元横綱貴乃花との相撲を振り返った。

 「いろいろな横綱と対戦しました。横綱ですから当然、みんな強いですが、一番強いのは誰かと聞かれると、私は即答で『貴乃花』と答えます。9回対戦して、1度も勝てませんでした。私にある程度、相撲を取らせてくれるんです。一方的に負けることはありませんでした。ある程度、相撲を取らせてくれて、力を出させてくれて、私がもう力尽き果てたころ、貴乃花関は勝負をつけるんです。一方的に負けるときでも相手が強いと思うが、逆にある程度、力を出させてくれて、それでも勝てないとなると、もうこれはかなわないなと思います。実際、貴乃花関という人は、そういう人でした」と明かした。

 よく、歴代最強は誰かという問いかけもされるという。これに対しては「昔の横綱と今の横綱を比べることはできませんし、失礼ですが、ただスポーツはどんどん進化しています。陸上の100メートルでは、84年のロサンゼルス五輪でカール・ルイスが9秒99で金メダルを取りました。しかし今、9秒99というタイムはどうでしょうか。メダルどころか、決勝の8人に残れないかもしれません。それぐらいスポーツは進化しています。ですので、もし対戦することができたら『現在』が最強だと思います。とすると、私が対戦した中で一番強い貴乃花関が史上最強だと思っています」と持論を述べた。

 こうした丁寧な説明に参加者も聞き入り、約80分間の講演はあっという間に終了。西岩親方は「現役のときは相撲だけ取っていれば良かったけど、今は土俵以外の仕事もこなしていけたら。テレビで見ている『今』だけではなく、相撲の長い歴史を多くの人に知ってもらいたい。“社会人”として、いろんなことに挑戦していきたいですね」と話した。