初の綱とりに挑む大関豪栄道(30=境川)が、無傷の5連勝で重圧のかかる序盤5日間を乗り切った。西前頭筆頭の碧山を、攻め続けて押し出した。地道な四股で鍛えた下半身は安定力抜群。全勝優勝した先場所初日からの連勝も「20」に伸ばし、大関在位中の連勝記録では若嶋津に並ぶ歴代5位に浮上した。

 決して、引かない。突っ張る碧山の腕をはねのけて、豪栄道が前に出た。相手のはたきにも、手はつかない。攻め続けて、押し出した。「必死やったんで。(碧山は)重い突き押しもあるし、はたきも強烈。我慢して取れました」。息を荒らげながらも、満足げに振り返った。

 初の綱とり場所で、勝ちっ放しの5連勝。「まだまだこれからですよ」と無関心を強調するが、初優勝を全勝で飾った秋場所初日からの連勝は「20」に伸びた。昭和以降、大関在位中の20連勝は6人目。横綱に昇進した大関も含めた計87人中歴代5位の快記録だ。

 32年前、大関として20連勝した元若嶋津の二所ノ関審判部長は「体が大きくなってるから、押されない。安定感がある。連勝のたびに自信もついてるんじゃないか」とみる。その安定感の源は、強い下半身にある。秋巡業では、貴乃花巡業部長(元横綱)の指令もあり、幕内の稽古が始まると土俵で四股を踏み続けた。

 大関時代に30連勝して横綱へと昇進した同部長は「足を上げたときに、力を抜いて土踏まずを意識しながら、つま先から下ろす。そのときは股関節を軸にする」などと、一般人向けの講演でも力説するほど四股を重視する。豪栄道も1回ずつ腰を落とし、太ももに負荷をかける。福岡の朝の稽古場でも、入念な四股で汗をかく日々だ。

 人生最大の勝負場所。序盤は、重圧を感じさせない相撲で終えた。「内容は悪くない。気を引き締めてやるだけですよ」。綱を手繰り寄せるまで、まだまだ勝ち続ける。【木村有三】