横綱日馬富士(32=伊勢ケ浜)が、2日続けて平幕に苦杯をなめた。東前頭2枚目の松鳳山に寄り切りで敗れ、15年夏場所以来10場所ぶり5度目の2日連続金星配給。横綱在位26場所目で初めて序盤3日間で2敗目を喫し、観戦した横綱審議委員会の守屋秀繁委員長から苦言を呈された。

 何度も首をひねった。前日の御嶽海に続き、松鳳山にも金星を配給した日馬富士の顔がゆがむ。2日続けて平幕に敗れたのは10場所ぶり5度目。角界最高位の誇りを汚す最大級の屈辱に、唇をかみしめながら花道を引き揚げた。風呂上がりの支度部屋でも悔しさを抑えきれない。「はぁ~」「あぁ~」と何度も深いため息をこぼした。

 見せ場がなかった。やや左に動いた相手に、立ち合いの威力が半減。突き放しながら強引に上手を取ろうとするが、逆にもろ差しを許し、苦し紛れの小手投げも通じない。力なく土俵を割り、控えに座る白鵬の元へと落ちた。「まあ、仕方ない。負けは負けだから」と言うしかなかった。

 「魔の日」に、またもはまった。昨年春場所から4場所続けて3日目に平幕に敗れていた。同秋場所で隠岐の海に敗れた後は「これで何場所連続で3日目に負けた?」と逆取材するほど、気にしていた。九州場所で止めたはずの悪い流れに、再びのみこまれた。

 観戦した横綱審議委員会の守屋委員長からは、痛烈な苦言も浴びた。昨年末の稽古総見でも豪栄道と稀勢の里に4戦全敗だった姿を見ている同委員長はこの日、プライベートで観戦し「日馬富士は引退かな。総見もダメだったし。いやまだ早いか」と、冗談交じりに漏らした。NHKのテレビ解説を務めた師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も「ちょっと相撲が雑。我慢が足りない。すぐ投げに行ってしまう。良くないですね」と酷評した。

 横綱在位26場所目で序盤3日間で2敗は初めて。金星配給数も31個目で、歴代8位に浮上した。慢性的に痛みがある両足首に加え、右肘にも古傷を抱える。満身創痍(そうい)の横綱には、厳しい新年の幕開けになった。【木村有三】

 ◆日馬富士の魔の3日目 横綱在位26場所のうち、相撲を取った23番は今場所で9敗目。十両から数えれば計74番で39勝35敗となっている。