元横綱の貴乃花親方(44)が育てた、2人目の幕内力士が、黒星街道からようやく抜け出した。

 東前頭12枚目の貴景勝(20)が、同16枚目の大砂嵐(24=大嶽)を、本来の押し相撲で圧倒。押し出しで破り、うれしい新入幕初白星を挙げた。ここまで4日間の精神状態は「結果が出ない時こそ、気持ちを腐らせず、信じてやってきたことを思い出しながら原点に戻る、ひたすら前に出ようと思っていた」と振り返り、正直な胸の内を「ホッしました」と話した。

 それでも連敗中は「このままいっってしまうのでは」というマイナス思考や「立ち合いの変化も…」の思いも一瞬、頭をかすめたという。それも瞬時に打ち消したのは「つらい思いをしないと精神的に強くなれない。試練を与えてくれてありがとう、と思ってやりました」と話す、師匠ばりの求道心。そして「貴乃花部屋は、ただの相撲部屋ではないんです。スカウトもない。師匠に教えてもらいたい一心で入門する。その意志を引き継ぐ覚悟でやっていますから」というプライドも、安易な勝ち方に頼らない、真っ向勝負へと貴景勝をいざなった。

 初の懸賞は3本をゲットした。「師匠からは『顔じゃない』と言われて返されるかもしれない」と覚悟の上で1本を贈るつもりだ。残る2本は「付け人で背中を追いかけていたのが良かった。あの人がいなかったら今の自分はいない」と話す兄弟子の貴ノ岩(26)と、自分へのプレゼントにする。