中国出身で東前頭2枚目の蒼国来(荒汐)が、外国出身力士では史上最年長の33歳2カ月で初金星を獲得した。初の結びで横綱日馬富士をはたき込みで破った。11年4月に八百長関与と認定されて追放処分を受けながら、13年に東京地裁から解雇無効の判決を勝ち取り復帰。波瀾(はらん)万丈の土俵人生で、大きな勲章を手にした。

 夢中で俵を伝った先に、歓喜の瞬間が待っていた。日馬富士に押し込まれ、たまらず蒼国来は後退した。右かかとが俵を越え、蛇の目を踏みかけた。だが、耐えた。右へと回り込んだ。その直後、横綱の体が一瞬早く土俵に落ちた。

 33歳2カ月。年6場所制になった58年以降では豪風に続く2位、外国出身では史上最年長の初金星。「何が何だか、分からなかった。俵の上で残った感じはしたので。よく残った」。初の結びで、館内から喝采を浴びた苦労人は「まさか勝つとは。うれしいです」と喜びをかみしめた。

 波乱に満ちた土俵人生を送ってきた。角界が揺れた11年の八百長問題。10年夏の春日錦戦が“クロ”と認定され、日本相撲協会から追放された。だが、地位確認訴訟で東京地裁から解雇無効の判決を得て、13年名古屋から西前頭15枚目で復帰。2年のブランクが響いて直後に十両に転落したが、追放期間中に社会人ラグビーチームで鍛えた努力を無駄にせず、再びはい上がった。「思い出したくないけど、ここまで来たのは、毎日コツコツやってきたから」。訴訟中も“シロ”と信じてくれた師匠の荒汐親方(元小結大豊)にも「感謝したい」と頭を下げた。

 荒汐部屋では、看板猫のモルとムギが大人気で昨年10月には写真集も発売された。「人気で負けているのは悔しいね。猫より有名になりたい」と話していた蒼国来。これで知名度アップは間違いない。【木村有三】

 ◆八角理事長(元横綱北勝海)の話 (蒼国来は)よく残った。33歳の初金星はうれしいだろう。稀勢の里は精神的にも、粘り強く左を差しにいっているのがいい。粘り強くいけば安定感がでる。正代は上位にとって怖い存在で、貴ノ岩も上位には嫌な相手だろう。

 ◆蒼国来栄吉(そうこくらい・えいきち)本名・恩和図布新(おんわとうふしん)。1984年1月9日、中国・内モンゴル自治区生まれ。03年秋場所初土俵、10年初新十両、同年秋新入幕。11年4月に八百長に関与したと引退勧告を受け、拒否して解雇されたが、13年3月に解雇無効の判決。同年名古屋で復帰。解雇前の最高位は東前頭13枚目。今場所は自己最高位。家族はトンガラ夫人。185センチ、146キロ。