館内をヒヤヒヤさせた横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)の一番を、協会関係者は冷静な目で見守った。

 この日は、横綱審議委員会による本場所総見の日。間近で観戦した北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は「稀勢の里人気はすごい。勝った時(の大歓声)はめちゃくちゃだった。稀勢の里のおかげで相撲人気も上がっている」と驚きつつも、取り口から負傷の回復具合について「だんだんと良くなってきているのかな、と思ったけど左はまだ完全でなく、おっつけが効かない」と冷静に分析。万全でないため、連続優勝した最近2場所の相撲は求めるべくもないようで「この場所に関しては優勝を求めない。(出場は)ファンも望んでいるが、全て勝てとは思っていない」とファン目線からの心理を読み解いた。

 また八角理事長(元横綱北勝海)も、左おっつけから差す形になれない横綱を「(本来なら)左をあおりながら早く自分の形になれるのが、痛めている影響があるのだろう」と分析。今後もヒヤリとさせる相撲が続くことを見越し「今場所は今日のような感じではないか。完璧な相撲は、慣れてきて最後に出るかも、ぐらいの感覚では」と横綱の心中を推察した。