横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が西前頭2枚目千代翔馬(25=九重)を寄り倒し、連敗を逃れた。負ければ98年名古屋場所の3代目若乃花以来7人目となる初金星から連日配給となったが、30秒3と時間をかけて踏みとどまり、序盤戦を2敗で終えた。

 稀勢の里は、初顔合わせの千代翔馬に苦戦させられた。立ち合い直後、負傷している左側にまわられて上手を取られた。後手に回り、外掛けや下手投げで揺さぶられた。その度に会場から悲鳴が沸き起こり、辛抱しては歓声が上がった。流れでやっとつかんだ右上手をつかみ、胸を合わせて寄り倒した。執念だった。

 連敗は逃れたが、内容に満足できない。「相手の仕掛けに落ち着けたか?」という問いに「そうですね」とだけ答えて、他の質問には無言を貫いた。取組を見守った横綱審議委員会の北村委員長は「言われたほどひどくなくて安心している」と左上腕付近のケガの具合について前向きに言った。しかし「だんだん良くなると思ったけど完全ではない。ただファンも全て勝って欲しいとは思っていない。歓声はめちゃくちゃすごいね」と指摘した。

 横綱鶴竜の休場が決まったこの日の朝。稽古後に、綱の責任感を問われると「変わらない。今日に集中してやるだけですよ」と気持ちにぶれはなかった。37年夏場所の双葉山以来80年ぶりとなる初優勝から3連覇は容易でない。辛抱の土俵が続いている。【佐々木隆史】