劇的な逆転勝ち越しに王手をかけた。陥落した幕下で4場所目を迎えた東幕下19枚目の豊ノ島(33=時津風)が、失意の3連敗から3連勝。13日目以降に組まれる最後の7番相撲に、勝ち越しをかけるまでこぎつけた。

 負ければ2場所連続負け越し決定となる、東幕下16枚目の栃丸(24=春日野)との一番。胸で当たり得意のもろ差しを狙ったが、これは封じられた。ならばと、突き放そうと突っ張る相手の腕を下からあてがいながら、押し相撲で前進。休まず最後は、もろハズから押し出した。

 負けを恐れない熱い気持ちの中でも、頭は冷静にイメージ通りの一番だった。「もちろん二本、入れる気持ちだったけど、入らなかったら下から圧力をかけようと思っていました。突き落とされても、それは仕方ない。負けることを恐れずに行った。そんな気持ちで開き直れましたね」。

 3連敗した6日目の取組後、「受けに回っている」とアドバイスしてくれた荒磯親方(元前頭玉飛鳥)がこの日の取組後、再び声をかけてくれた。「見違えるような相撲を取っている。今日みたいな相撲を取れば強いんだから」。あれ以来、何かが吹っ切れて、忘れかけていたものを取り戻した豊ノ島。3連敗から3連勝の精神的な立て直しにも「自分が精神的に強かったら3連敗なんかしてない。周りの人の、ちょっとした言葉で、気の持ち方を変えられるようになりました」と感謝の気持ちが絶えない。場所を締めくくる7番相撲も「3連勝は内容もいい。最後もしっかり前に出る相撲で締めくくれたら」と結果を恐れずに臨む。