夏場所限りで引退した大相撲の元前頭佐田の富士(32=境川)の中村親方が1日、東京・両国国技館で会見し、14年の相撲人生を「長いようで早かった。思い残すことはありません」と振り返った。

 生まれつき右脚の股関節に支障があり、常々悩まされてきたという。かかりつけの病院では手術ができず、ずっと痛み止めを飲んでごまかしてきたが「痛みが出て、どうしようもなくなった。私生活でもきつくなった。体に限界を感じて、続けるのが難しいと思い、引退を決めました」と明かした。3月28日に北九州市内の病院でようやく手術を受けることができ、現在はリハビリの段階だという。

 思い出の一番に挙げたのは自己最高位の前頭2枚目で戦った、15年秋場所の5日目の横綱鶴竜戦。「初めて結びで取らせていただいた。(はたき込みで)相撲には負けたんですが、すごく気持ちよく取れた」と振り返った。

 今後は部屋付きの中村親方として後進の指導に当たる。「協会の仕事を一生懸命頑張ります」と言うと、師匠の境川親方(元小結両国)から「部屋の仕事も頑張らんかい!」とツッコミが入ったが「師匠は義理人情がある。自分の性格上、師匠みたいにはなれないが、師匠に近づけるように頑張りたい」と抱負を語った。

 長崎出身の同郷で、自身の恩師が佐田の富士の柔道の顧問という縁で角界に誘った境川親方は「(高校当時は)体重は90キロあるか、ないかだった。部屋に来て倍以上太ったんです」と笑わせて「自分の師匠の佐田の山さんの『佐田』をいただいていて、『佐田』を使った人間を早く関取にしたいと思っていた。よく我慢してやってくれた。相撲も性格も、不器用な男。いろいろ経験しているので、若い子たちにどんどん伝えてやってほしい」と願った。

 9月2日に国技館で断髪式を行う予定。