新十両で西十両14枚目の翔猿(とびざる、25=追手風)が、うれしい関取初白星を挙げた。連敗スタートで迎えたこの日の相手は、ほぼ一回り年上で日大の先輩にあたる里山(36=尾上)。突き出しで記念の勝利をマークした。

 立ち合い前の仕切りは、里山が腰を下ろすタイミングが遅く、腰を割って待っていた翔猿は「しゃがんでいるうちに締め込みがきつくなって」と嫌った。再度、仕切って鋭い出足で圧倒。土俵を左回りに回り込む里山を、低い体勢で適度な間合いを保ちながら、休みなく突き、押しで攻勢。イメージ通りの相撲でものにした。

 引いたり回り込んだりと、縦横無尽に動き回るのが翔猿の持ち味。それも、前に圧力をかけるのが前提としてあるだけに、この日の前進あるのみの内容は文句なし。本人も「今日は良かった。うれしいっす。中に入らせないように、引っ張り込まないようにした。だいぶ良かった」と、何度も自画自賛の言葉を並べた。

 十両最下位の西14枚目。負け越しが決まった時点で、幕下陥落が決定的な番付。連敗スタートでマイナス思考に陥っても仕方ないが「自分の相撲を取れば勝負できると思っていた。(星勘定は)考えないように一番一番と思ってます」と前向きな姿勢は失わない。中継するNHKで新十両力士を紹介しインタビューするコーナーが毎場所あり、今場所は4日目の12日に放送される。白星がなければ、今場所の相撲は敗れた映像しか流されなかったところ。「これでインタビューで使う映像が出来ました。良かったな~」。いろいろな意味で、うれしい白星となった。