2場所連続優勝を狙う横綱白鵬(32=宮城野)が、初金星を狙う西前頭筆頭の貴景勝の挑戦をはね返した。突き合いの応酬の中、突如仁王立ち。ぶつかり稽古さながらの構えで相手を呼び込んで寄り切った。通算勝利も1040勝に到達し、魁皇の歴代最多通算勝利1047勝にあと7勝に迫った。平幕阿武咲が平幕宇良に敗れて、全勝は白鵬、小結嘉風、平幕碧山、錦木の4人となった。

 異様な光景に館内がざわめき立った。両腕をだらんと下に落とした白鵬は、そのまま仁王立ちして、左足を後ろに引いて、右足を前に出して半身になった。「さぁ、来い」。そう言わんばかりに、口元がかすかに動く。両腕は下ろしたままで、両手のひらで若武者を招いた。土俵上に生まれた8秒の間。意を決して胸に飛び込んで来た貴景勝をがっちりと受け止めて左四つに組み、じりじりと土俵の反対側まで押し返した。その光景はぶつかり稽古さながらだった。

 支度部屋に戻ると、息を切らしながら振り返った。「最後は間がありましたけどね。攻めるというより、切り替えができた」。左の張り手から右でかち上げた立ち合い。そこから四つに組むのがいつもの流れだが、貴景勝に距離を取られた。そして「なんかそうなった」と無意識で両者が見合う格好となった。構えている時に、口元が動いていたこと指摘されると「『来い』って言ったのかな~」と覚えてはいない様子。しかし、余裕があったのかと問われると「余裕があるから勝つんだから」とさらっと言った。

 横綱としての責任感があった。この日の朝稽古で、鶴竜が休場したことを知ると「託されたと思ってしっかり務めたい」と神妙な面持ちで話した。そして横綱唯一の全勝キープ。歴代最多通算勝利まであと7勝と迫ったが「一番一番」と緩みはない。横綱の貫禄が一段と増した日になった。【佐々木隆史】