歴代最多の1047勝に挑まれた。その意識は実は「全然なかった」。だから心が冷静だった。「横綱の緊張が伝わってきました。オーラや感覚で。毎場所やっているから分かる。思い込みかもしれないけど」。

 朝、白鵬の存在についてこうも話していた。「人気が落ちたときも上がってきたときも、1人で相撲界を支えてきた。(その意味で)ほぼ日本人です。だからこそ何が何でも勝つという姿勢を見せる。そこは見習いたい。いい相撲でも勝たないと意味がないんです」。その横綱の強さの源と見た「気持ち」で上回った。

 「ちょっとでも記憶に残ればいいですね」。大記録を、すぐには決めさせなかった男。御嶽海は、後世にそう残る。【今村健人】

 ◆八角理事長(元横綱北勝海)の話 白鵬は左を差して少し安心したのか。(記録への影響は)楽しみが先延ばしになった、ぐらいの気持ちだろう。御嶽海は、出し投げ気味に投げてうまく回り込んだが、あの展開は本人も思ってもみなかっただろう。優勝争いという意味では大殊勲だ。

 ◆幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山)の話 御嶽海は今までの対戦を踏まえてうまく考えて取った。立ち合いの変化はやめて前に出る相撲を続ければ、関脇以上が見えてくる。白鵬は、記録への意識はあまりないのではないか。意識するとすれば優勝の方でしょう。