横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)が、西前頭筆頭の琴奨菊との結びの一番で、不完全燃焼の初黒星を喫した。立った瞬間に待ったと思ったのか、力を抜いて相手の背中をたたいてアピールしたが、立ち合い成立で棒立ちのまま寄り切られた。金星配給は36個目で柏戸、曙を抜き単独4位。3横綱らが休場する中、土俵上も締まらない3日目となった。

 支度部屋に戻った日馬富士は、表情を変えることなく口を開いた。「見ての通りです」。間を少し開けて「もったいないね」とつぶやくようにはき出した。

 上位陣で唯一負けなしで挑んだ結びの一番。立ち合いで、つっかけるように先に立ち、合わせて立った琴奨菊がぶつかってきた瞬間だった。力なく上体を起こして、右手で相手の背中を4度たたいた。それでも止まらない相手に、一気に寄り切られた。立ち合い不成立と思ったのか、土俵を割った後も、ふに落ちない表情で右手を挙げて審判にアピール。しかし、覆ることはなかった。

 山科審判長(元小結大錦)は「(行司が)『残った残った』と言っているのだから力を出さないとダメ。自分からいったんだから。向こうが待ったするなら分かるけど」と日馬富士に非があるとした。立行司の式守伊之助は「私は手しか見ていません。両方が手を着いたと思って、成立したと思って軍配を引きました」と説明。八角理事長(元横綱北勝海)は「力を抜いたらだめ。ちょっと気負ったのか、その気持ちは分からないではないが」と1人横綱の気持ちをくんだ。

 3横綱1大関が休場で、日馬富士への期待は大きい。それだけに八角理事長は「いい相撲を見せて欲しかった。お客さんも消化不良だから熱戦を期待してたけどね」と肩を落とした。日馬富士は「今日は今日。明日は明日」と気持ちの切り替えに努めた。荒れる秋場所は、どこまで荒れるのだろうか。【佐々木隆史】