東前頭2枚目の北勝富士(25=八角)が“無意識”の相撲で2個目の金星を獲得した。初めての結びの一番で、横綱日馬富士を寄り切り。立ち合いの頭同士の衝突で意識が飛ぶ中、体に染みついた動きで、2場所連続の金星をつかんだ。

 初めて、座布団を舞わせた。初めて、結びで勝ち名乗りを受けた。26本もの懸賞の束をつかんだのも初めてだった。そのどれもが記憶になかった。「意識が飛んだっす。覚えているのは当たった瞬間と横綱が土俵際だったこと。(意識が)戻ったのは花道に下がるくらいです。写真みたいにパパパパッと場面があるけど、つながっていない。不思議な感じです」。北勝富士はまさに夢の中にいた。

 立ち合いの衝撃で「無」になった。日馬富士に右を差されて俵を背負うが「意識が飛んだのが良かった。肩に力が入らなかった」。無意識のまま左からいなして回り込み、右上手を取って寄り切った。スムーズな一連の動作は積み重ねた稽古の証し。「結びで、しかも先場所は圧倒されて『すげぇ強え』と思った横綱から勝てたのはうれしい」。初金星以上の喜びを感じていた。

 年6場所制となった58年以降、2位タイのスピード記録だった前回の初金星同様に、懸賞1本は師匠の八角理事長(元横綱北勝海)に贈る孝行息子。1横綱3大関との対戦を不戦勝も含めて3勝。あとは関脇以下との対戦しかなく「早かったっすね」と不敵に笑った。荒れる秋の主役候補にまた1人、名乗りを上げた。【今村健人】