大関豪栄道(31=境川)が、優勝に王手をかけた。東前頭9枚目貴ノ岩に執念の渡し込みを決め、11勝3敗とした。千秋楽は1差で追う横綱日馬富士との大一番。勝てば、昨年秋場所以来2度目の優勝だ。前日までの2連敗で、残り2日で16力士に優勝の可能性が残る混戦を招いたが、3横綱2大関休場の場所は大関-横綱決戦で締めくくられる。

 勝っても負けてもおかしくない、激しい相撲をものにした。豪栄道が勝った。「集中してやろうと思った。必死でした」。乱れたまげ、真っ赤な顔で語る言葉に実感がこもった。

 何度も我慢した。立ち合いは2度待ったがかかった。3度目で立つと、貴ノ岩の圧力に一瞬引いて、思いとどまった。突き押しの応酬で2度はたかれた。最初は踏ん張った。2度目はまわしにしがみついた。最後は右手でまわしを、左手で足をつかみ、倒れ込みながら渡し込みを決めた。

 悪夢の2連敗を乗り越えた。12日目の松鳳山戦、13日目の貴景勝戦。いずれも勝てば王手の一番を落とした。「自分でも何をしてるか、全く分からんかった」。2日目からの連勝が10で止まり、自分の中の何かが変わった。「(緊張は)出ないと思ってたけど、出てきたね。昨年は(優勝が)初めてで無我夢中やったけど…」。2度目の優勝ならではの泥沼。3横綱2大関が休場し、終盤戦も格下相手の取組が続くことも「(星が)落とせない気持ちになると、人間は弱い」と、マイナスに作用した。「開き直っていくしかない。根性決めてやるだけです」と崖っぷちになってようやく、腹が据わった。

 千秋楽は日馬富士と一騎打ちだ。今場所最初で最後の横綱戦。本割で勝てば優勝。負けても優勝決定戦に回れるが、そんなことは考えない。「幸せなことだと思う。思い切りいくだけです。最後は勝った方が強いわけやから」。攻めの一心。2度目の優勝は、その先にある。【加藤裕一】