最後に届かせた。東前頭3枚目の阿武咲(21=阿武松)が貴ノ岩を押し出して、新入幕から3場所連続の2桁勝利を果たした。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、過去6人が挑み、初代横綱若乃花も白鵬も、誰も成し得なかった快挙。「最後にいい勝ち方で終われて良かった。(連続2桁は)そんなに意識はない。土俵の上で思い出しました。『そういえば』と」と結果よりも内容を喜んだ。

 「世代交代」の象徴となった今場所、闘志を隠さない姿で魅了した。土俵では相手に、殺意すら抱いて臨む。「勝ったモンが強い。男らしい、勝負の世界にいられるのがいいんです」。だから、初めての上位戦も全く臆さなかった。5日目まで1横綱1大関2関脇1小結をなぎ倒した。「強い人とやれてうれしかった。独特な緊張感があったし、これからに生きる」と次の九州場所も楽しみにした。

 その来場所は新三役が濃厚。だが「番付は関係ない。強くなることだけが目標。強くなることを追求していく」と言い切った。2度目の敢闘賞に輝き「うれしい」と喜んだが、それまで。最初のトロフィーは手元にない。「そのまま送って(青森の)恩師にあげました。過去の物は持っていても仕方ない。懸賞袋もあげちゃう。思い出に浸らない」。2度目もすぐに過去の物になる。

 同学年の貴景勝も殊勲賞を獲得し、相撲教習所で一緒だった阿炎も十両優勝を飾った。若い世代同士の“刺激”は数多くある。その中で先頭に立つ-。「その気持ちはあります」と力強く宣言した。【今村健人】