大相撲で3場所連続休場中の横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が6日、九州場所(12日初日、福岡国際センター)に向けた“出稽古”で復活の兆しを見せた。福岡県春日市の尾車部屋で行われた二所ノ関一門の連合稽古に参加し、関脇嘉風と10番連続で取って8勝2敗。春場所で負傷してから思うように動かなかった左上腕の動きが快調で、見守った親方衆や力士らからは復調を期待する声が上がった。

 稽古を終えた稀勢の里は、笑顔を浮かべていた。「悪くはない。いいんじゃないかな」。三番稽古の相手に指名したのは、名古屋場所前の連合稽古で、2日合わせて11勝19敗だった嘉風だった。苦杯を喫した相手にやり返し、言葉以上に手応えを感じていた。

 得意の“左”で不安を一掃した。最初の2番は、嘉風に左腕を封じられて連敗。嫌な空気が流れたが、次の一番で断ち切った。警戒されていた左はずが決まると、左腕一本で嘉風の体勢を崩して寄り切った。その後も、強烈な左はず押しで突き落とすなど、力強さを見せた。負傷後、最も良い動きを見せた左腕の復活に「なかなか良かったと思う」とうなずいた。

 周囲も復調を確信した。前日に胸を合わせた琴奨菊は「戻っているどころか強くなっている」と驚き、嘉風は「名古屋の時と全然違う。左が使えるようになって当たりの圧力も違う」と体感した。師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)からは「勝負勘も戻っている。(先場所前に比べて)全然いい」と太鼓判を押されるほど仕上がっている。

 本場所まで残り1週間を切った。横綱昇進後、初めて秋巡業を完走して、順調に調整を進めてきた。しかし「納得を求めたら時間がかかる。少しでも理想に近づけるように」とさらなる進化を目指していく。今日7日も連合稽古が行われる予定で、春場所以来の優勝へ向けギリギリまで追い込んでいく。【佐々木隆史】