角界にまた“事件”が起きた。日本相撲協会は5日、立行司の式守伊之助(58=宮城野)が、10代の若手行司に対して冬巡業中の12月16日に沖縄・宜野湾市で泥酔し、数回キスして胸を1度触れる行為を行ったと発表した。若手行司は精神的にショックを受けているが、警察に被害届を提出する考えはないという。元横綱日馬富士関による暴行事件関係者への処分がすべて出た翌日に、行司のトップによる酒席でのトラブルが判明。近日中に臨時理事会を開き、処分を決める。

 通常は警備員以外は誰もいない、午後11時過ぎの両国国技館で異例の発表が行われた。八角理事長(元横綱北勝海)をはじめ、相撲協会執行部が数時間にわたって事実確認した内容は、立行司の式守伊之助による10代の若手行司へのセクハラだった。深夜、報道陣に対応した八角理事長は「指導する立場にある立行司として本当に情けない」と怒気に満ちた声で話した。

 協会が「非違行為」と表現したセクハラは、冬巡業最終日夜の12月16日に起きた。宿泊先のホテルで、式守伊之助が夕食の最中に泡盛を飲んで泥酔。食後、部屋まで送ってもらった若手行司に数回キスし、胸に1度触れた。これに若手行司は大きなショックを受け、謝罪を求めた。

 この事実を協会は5日夕方、行司会監督の幕内行司から報告を受け、ただちに両国国技館で高野危機管理委員長が聴取し、事実関係を確認した。式守伊之助は若手行司に謝罪した。若手行司に処罰を求める意向はなく、警察に被害届を出す考えもないという。

 聴取した際の話として、式守伊之助は「泥酔していたので覚えていない」や「自分は男色の趣味はないので、なぜこのような行為をしたのか分からない」などと述べていることも発表された。八角理事長は「酒の席での言動は以前から注意していた。記憶をなくすような飲み方も良くない」と、終始厳しい口調で話した。

 相撲協会は前日4日に貴乃花親方(元横綱)の理事解任を正式決定し、元日馬富士関による秋巡業中の酒席での暴行事件は、一定の決着がついていた。初場所(14日初日、両国国技館)に向けて、土俵に目を向けるべく新たな1歩を歩まなければいけない矢先に、またも酒席のトラブルが起きた。鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)は「近々、臨時理事会を開いて処分を決める」と話し、初場所初日までの臨時理事会開催を目指すという。力士の最高位である横綱が1人減った初場所は、行司の最高位の木村庄之助が不在で実質トップの式守伊之助も出場停止などの重い処分が科される可能性がある。