セクハラ行為が判明した立行司の第40代式守伊之助(58=宮城野)が、再び土俵に立つことなく角界を去る。日本相撲協会は13日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、初場所(14日初日)から3場所出場停止を決めた。伊之助から辞職願を預かり、処分が明ける5月の夏場所後に受理する。その間は無給で自宅謹慎。立行司は不在となり、三役格行司が代行する。また所属部屋の師匠である宮城野親方(元前頭竹葉山)と、巡業部長を兼任する春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)も厳重注意を受けた。

 現役最高位の責任は重かった。出席者によると、臨時理事会に呼ばれた伊之助はセクハラ行為を認め「協会、ファンの方に対して申し訳なく思っております。10代の行司に対して大変申し訳なく思っております」などと謝罪を繰り返したという。その場で辞職願が提出された。

 会見に臨んだ八角理事長(元横綱北勝海)は「反省する時間を与えたい。本人にもこの間に反省するようにと伝えた」と述べた。3場所出場停止の処分が明けた5月の夏場所後の定例理事会で受理する。その間は自宅謹慎で、再び土俵に立つことはない。

 あらゆる業務に携わることのできない、前例のない「業務停止」に近い処分を、無給で受けるという極めて厳しい処分となった。もともと不在の木村庄之助とともに立行司が完全に不在となるため、日々の業務から伝統まで代役を務める三役格行司では知らないこともある。最低限の引き継ぎなどは自宅でできるよう「出場停止」になったという。

 過去に木村庄之助と式守伊之助が相次いで定年退職した94年初、春場所など、立行司不在の例はあった。だが不祥事による出場停止が絡んで、立行司が不在となるのは極めて異例。元横綱日馬富士関の暴行事件に続いて世間を騒がせ、八角理事長は「このたびは暴力問題に続きまして、伊之助の不祥事がありまして、誠に申し訳なく思っております」と頭を下げた。

 今回のセクハラ行為は、冬巡業中の昨年12月16日に沖縄・宜野湾市で、泡盛で泥酔した伊之助が10代の若手行司に数回キスし、胸を1回触ったもの。行司会監督の木村寿之介(友綱)と木村要之助(東関)の幕内格行司が協会に報告した。さらにホテル内で夕食後に、寿之介の部屋に移った2次会の後で起きたなど補足した。八角理事長は「伊之助は立行司で58歳という年齢を考えても本人の責任が重い」と断言。終始厳しい口調で話した。