3横綱のうち唯一出場する鶴竜(32=井筒)が、完勝で好発進した。痛めている右手で小結千代大龍の前まわしを取ると、休まず攻めて寄り切り。「立ち合いが良かった。痛いからといって変な相撲を取らないように心掛けた」。1月の初場所千秋楽で右手薬指を脱臼し、その後は同中指と小指も痛め、まわしを取ることが容易ではない中で、圧力のある相手を圧倒した。

 直前で2大関が続けて敗れた。1人横綱にかかる重圧は一段と増す状況となったが「気にせず自分の相撲に集中した」と風格を漂わせた。初場所は初日から10連勝した直後に4連敗して優勝争いから脱落した。白鵬、稀勢の里不在で、一昨年11月の九州場所以来となる優勝の本命と期待され、自身も優勝への思いは強い。それでも「勝ちたい思いをいかに自分で封印してできるか」。“荒れる春場所”を予感させる展開に動じない冷静さと、横綱の責任感から出場した情熱で連勝街道を進むつもりだ。

 ◆八角理事長(元横綱北勝海) 鶴竜は、いいところ(右前まわし)を取れた。横綱だから強い。いい相撲だ。高安は安全に勝ちたいという気持ちが強かったのか思い切りが足りないように見えた。豪栄道は上体に力が入りすぎ。ただ、まだ初日。これからだろう。