元横綱大鵬(故人)の孫、納谷(18=大嶽)が、初めて番付に載った序ノ口で白星デビューを飾った。東18枚目で登場。188センチ、170キロの巨体で、164センチ、67キロの小兵、西16枚目宇瑠寅(うるとら、28=式秀)を圧倒。強烈な突き2発で押し倒した。大横綱のDNAで“ウルトラマン”をやっつけ、力強い1歩を踏み出した。

 たった2発の突きで勝負を決めた。納谷は重々しい四股の後、170キロの巨体でどっしり仕切る。67キロと体重が半分以下の宇瑠寅が土俵際に近い、後ろで仕切った。明らかな奇策狙いだが、動じない。突っ込んでくる相手をねじ伏せた。

 見た目は“横綱相撲”の豪快デビューだが、心境は違った。「ほっとしたのが1番です。高校の時と全然違う。めちゃくちゃ緊張しました。小学校の時以来ですかね」。3戦全勝だった初場所の前相撲とも違った。「控え(で土俵下)に入ったくらいから、気持ちが高ぶって…」と首をかしげた。大横綱の孫が、18歳の素顔をのぞかせた。

 旅立ちの時だ。5日は埼玉栄高の卒業式。はち切れそうな制服で出席し、相撲部の山田道紀監督に「自信を持ってしっかりやれ」と送り出され、同級生に激励を受けた。サインもねだられたが、関取以上しか許されない角界の慣例を守り「まだできないから」と断った。

 「前に出る」-。相撲の鉄則を磨くため、大嶽部屋で稽古を重ねる。「前に出ようと思うと、引かれて落ちちゃう。だから、しっかり足を出すように」。前相撲から体重は4キロ増え、さらにスケールが大きくなった。部屋では電話番などの雑用もこなすが「兄弟子もやってくれるので」と苦にならない。「高校も寮だったので。でも“また下から始まるんだ”という気持ちです」。今場所残り6番。全勝優勝を目指し、着実に白星を重ねるつもりだ。【加藤裕一】

 ◆第48代横綱大鵬は57年初場所初日に西序ノ口23枚目で白星。同場所は7勝1敗だった。