横綱鶴竜(32=井筒)が“鬼門”を突破して3連勝を飾った。過去3連敗中だった西前頭筆頭の玉鷲をはたき込みで破った。仕切りで間合いを詰め、相手が得意とする突き、押しを封じる作戦勝ち。中指、薬指、小指と右手の3本の指を痛めながらも、思い入れの強い大阪での出場にこだわり白鵬、稀勢の里が休場する中、1人横綱として存在感を見せた。

 仕切りの段階で「勝負あり」だった。大学教授を父に持つ角界きっての頭脳派の鶴竜は、過去の敗戦から勝利の方程式を導き出していた。立ち合いの圧力からペースを乱され、3連敗中だった教訓から、仕切りで間合いを詰めた。助走が短い分、相手の圧力を軽減させ、腕の長さを生かしたのど輪や突きも繰り出させない。胸元に潜り込んで押し込み、慌てた玉鷲が前に出たところをタイミング良くはたき込み。「立ち合いが良かったから、その後の流れも良かった」と、完勝に笑顔を隠しきれなかった。

 玉鷲に勝ったのは、最後に優勝した一昨年11月の九州場所以来、1年4カ月ぶりだった。1月の初場所は10連勝で対戦したが敗れ、そこから4連敗。優勝争いから脱落するきっかけの一番となった。そもそも03年に、夏休みを利用して来日していた玉鷲と井筒部屋の前で偶然会い、角界入りを仲介してあげた縁がある。さまざまな因縁もあり、最善策で隙を与えなかった。

 初場所千秋楽で右手薬指を脱臼し、その後、前後2本の指も痛めた。まわしをつかむのも一苦労。出場か休場か判断するリミットギリギリの8日夜に決断した。「簡単に『休場します』とは言いたくなかった。何もしないで休んでもつらい。一番はファンのことを考えた。大阪は年に1度だけ。自分も大阪で大関、横綱の昇進を決めた思い入れもある。可能性があるなら懸けてみようと思った」。体が悪ければ頭を使う。2場所連続の1人横綱。今場所こそ優勝をつかむつもりだ。【高田文太】

 ◆対鶴竜4連勝での金星奪取に失敗した玉鷲 相手のペースに巻き込まれた。(鶴竜の)仕切りがすごく近くて、それがわかったのに手をついちゃって…。むっちゃ後悔ですよ。