結びの一番で、初顔の西前頭2枚目阿炎(あび、24=錣山)に、優勝40回で5戦全勝の横綱白鵬(33=宮城野)が敗れる波乱。

 「稽古場だったら1000回やって1000回勝てる相手。これが一番勝負の怖さ」と表現した、藤島審判長(46=元大関武双山)は、いつにない白鵬の“変調”を出番前から察していた。

 まずは控えでのこと。2番前の豪栄道-千代大龍戦で、敗れた豪栄道が土俵をはった際に上がった砂が、西の控えにいた白鵬の体に降りかかった。その後、次の大栄翔に力水をつけに行った際、「ゲンが悪いと思ったんでしょうか。(体についた砂を)ずっと落としていた」と、しきりに気にする白鵬のしぐさが気になったという。

 次は自分の出番が来て土俵に上がるタイミング。通常は、行司の口上が終わり、呼び出しの柝(き)の音が鳴ってから上がるものだが「今日は(いつもより)早く上がっていた」という。

 控えでの様子など「今日は最初からリズムが悪かったですね。ソワソワしているというか。一番勝負は分からないもの」と、土俵下から目を光らせる審判長ならではの観察眼で、白鵬の変調を感じ取っていた。

 横綱相手に、もろ手突きで立ち向かい、回転のいい突き押し相撲を貫き通した阿炎の敢闘相撲には「まだまだ遠いですが」とした上で「寺尾関がダブって見えました。(寺尾は)千代の富士関にも、もろ手で行った。突っ張りが速い」と、元関脇寺尾で阿炎の師匠・錣山親方を思い浮かべるように語っていた。