人気力士の関取復帰は、来場所以降にお預けとなった。

 関脇経験者で東幕下14枚目の豊ノ島(34=時津風)が、土つかずできた今場所の5番相撲に登場。全勝同士の一番で、西幕下7枚目の極芯道(21=錦戸)に敗れ今場所初黒星を喫した。幕下15枚目以内なら7戦全勝で十両へ昇進するが、その夢は消えた。

 「今場所一番、悪い立ち合いだった。力みすぎて踏み込めなかったのかな」。陥落から10場所目で、幕下生活から脱出するチャンスだっただけに、余計な意識が立ち合いを乱した。左は入ったが、こじ入れた窮屈な形のその左腕に頭を付けられ、左半身で右前まわしを許す苦しい体勢。ある意味、その形は長年の土俵生活で「この形でも取れる」と染みこんだ体勢だったが、相手も無用には出ずにジッと我慢。右を強引にこじ入れて出ようとしたが、2分半が経過したところで我慢しきれず、引いて相手を呼び込み土俵を割ってしまった。

 相手の極芯道とは初対戦。ただ、自分が関取の頃から「対戦したら嫌な相撲を取るなと見ていた」という。「攻めが遅いし思った通りの相撲を取られた。研究されてたかもしれない」と図らずも嫌な予感が的中してしまった。

 帰り際、ポツリと「また延びるな、幕下生活が…」と無念な思いを口にした。ただ、幕下に陥落してもケガで番付を落とすなど、何度も挫折を味わってきた。そのたびにはい上がり、今は幸い、ケガも癒え精神的にも引退を覚悟した後は、開き直れている。関取復帰は逃したが、まだ1敗。来場所につなげるためにも「あと2番も大事。6勝したら、いいところまで戻れるし、しっかり勝って来場所につなげたい」と切り替えを言い聞かせていた。