大関昇進を目指す関脇栃ノ心(30=春日野)が11連勝で、トップを守った。平幕の琴奨菊のがぶり寄りを受け止め、左上手まわしを引くと左手1本だけで投げ飛ばした。直近3場所の合計勝ち星は「35」となり、限りなく昇進に接近。今日12日目は、いよいよ横綱白鵬との大一番だ。過去25戦全敗の天敵を破れば、有無を言わせぬ“大関当確”になる。白鵬とともに、横綱鶴竜も1敗をキープした。

 栃ノ心が押し込まれた。立ち合いで琴奨菊に左前まわしをとられ、右を差され、がぶられた。そこから、強かった。元大関の代名詞を受け止める。右下手で投げを打って崩し、左上手でまわしをつかんだ。「左でつかまえたら、もう大丈夫だからね」。堂々と豪快な上手投げ。左腕だけで勝負を決めた。過去の合口は7勝24敗だが、今の栃ノ心はもう、昔の栃ノ心ではない。

 勝ちっ放しの11連勝。大関昇進の目安とされる「直近3場所を三役で計33勝以上」の勝ち星を、計35勝で2つも上回った。昇進をはかる審判部トップの阿武松審判部長(元関脇益荒雄)は前日「濃厚」と話し、この日は「昨日以上の言葉はありません」としながら、その勝ちっぷりに「強いね」とうなった。

 大関昇進、2場所ぶりの優勝ムードが高まる中、今日12日目はついに大一番。白鵬とぶつかる。10年前の08年九州場所の初顔合わせから、25戦全敗-。寄り切り14度、上手投げ8度、下手投げ1度、すくい投げ1度、はたき込み1度。全く歯が立たず、たたきのめされてきた。

 なぜ勝てない? 春場所中に問われると、首をかしげて話した。

 「優勝40回でしょ? 信じられないよ。どうやったら、そんなに勝てるのか? 横綱は力が強い。それでいて柔らかいんだよ。そんな筋肉に見えないのにね。低く当たられて、いつも先に引いちゃう。(次やるときは)勝っても負けても、先に攻めたいね」

 昨年名古屋場所の最後の対戦から、初場所の初優勝があった。「勝つイメージしかない」というほどの自信を手にした。「気合入ってますよ。(今までと)ちょっと違うかもしれない。やってやるっていう気持ちですね」。天敵を倒せば、有無を言わせぬ大関昇進。2度目の優勝へも加速する。【加藤裕一】