東前頭13枚目栃煌山(31=春日野)が西同6枚目千代大龍を押し出しで破り、9勝2敗。この日、全勝を守った関脇御嶽海との2差を守った。現在の幕内力士で大関経験者を除き、最多25場所の三役経験を誇り、12年夏場所では優勝決定戦も戦った実力者だ。最高気温39・2度を記録した灼熱(しゃくねつ)の名古屋で悲願の初優勝へ-。休場した同部屋の新大関栃ノ心の分まで、V戦線を熱くする。朝乃山も2敗を守った。

 幕内屈指の当たりを誇る千代大龍を、栃煌山が立ち合いで止めた。引かれてできた微妙な距離にも、攻める気持ちを忘れず押し出した。「今日みたいな相手に当たり負けしなかった。(相撲は)よくなっている」。御嶽海と2差を守った。

 新大関栃ノ心を輩出した春日野部屋で栃ノ心より1年早く入門、何度も「大関候補」といわれた。三役25場所は、大関経験者を除き幕内力士最多。12年夏場所では賜杯を旭天鵬に譲ったが、優勝決定戦に進んだ。そんな実力者が初場所で左大胸筋肉離れ、先場所は東前頭15枚目、新入幕の07年春場所以降で自己ワーストタイまで番付を落とした。

 「四股、てっぽう、すり足をもっとやれ」-。夏場所後、師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)に助言され、基礎を倍近くこなした。「数年前から“重さ”がなくなった感じがあった。今は尻から背中にいい張りがある」。場所前の出羽海部屋への出稽古では御嶽海を9勝1敗と圧倒した。

 猛暑の戦いの中、癒やしは連夜のテレビ電話だ。相手は妻せりさん、生後10カ月の長女禀(りん)ちゃん。「どこで覚えたんか、“ママ”と言ったんですよ」。残念ながら「パパ」はまだ。強い「パパ」と呼ばれたい。無念の休場となった栃ノ心のためにも頑張りたい。「この位置(トップと2差)にいるんでね。ついていきたいと思ってます」。残り4日。帰ってきた実力者は最後まで夢を追う。【加藤裕一】