8場所連続休場中の大相撲の横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が3日、千葉・船橋市の二所ノ関部屋で行われた二所ノ関一門の連合稽古に参加した。

小結玉鷲を指名して10番で9勝1敗。馬力があり、出足も鋭い難敵相手に、立ち合いから押し込まれることもあったが、必死の形相で組み止め、時にはもろ差し、時には突き放しで次々と土俵の外に追いやった。「よかったです。相手は力があるから、しっかり集中していった。いい具合で調整できています。今のところいいと思います」と、手応えを口にした。

玉鷲は、立ち合いからのど輪で押し込む取り口が多かった。それでも「強いですよ。いつもの横綱に戻った。(のど輪は)全然効かなかった。思い切って当たったけど、あまり効いていない」と舌を巻いた。稽古を含めて、最後に胸を合わせた昨年11月の九州場所初日では、玉鷲が勝っているが、当時と比較して「全然違う。指名された時点で(休場中とは)違うと思った」と話した。対戦の可能性が限りなくゼロに近かった幕内下位の竜電、琴恵光を指名していた、先場所前の連合稽古との違いは、この日、胸を合わせる前から復調を予感していたという。

見守った尾車親方(元大関琴風)は「先場所と比べれば全然違う。左からおっつけて、左から差して前に出ることができている。動きはいいし、体のハリもある。あとは本場所の序盤3日を乗り切れれば。本場所の土俵は違うから、そこを乗り切れば、あとはいける。腰も割れているし、左をおっつけるのと同時に、足も出ている。1番負けたけど、手もついていないし『待った』みたいなもの。(見通しは)明るいんじゃないの」と評価した。

芝田山親方(元横綱大乃国)は「本人も必死だから。自分の立ち合いがどれだけできるか。もう1つ何か、踏み込みからのキメがほしい。左を差すなら差す、右上手を取るなら取る、押すなら押す。その3つのところで、どういう風に勝負するかだと思う。不安といっても始まらない。魂1つにして、頑張るしかない。1日1番、全力を尽くしていけば大丈夫だと思うよ。メンタルが1番の課題。悪いところがないわけじゃないと思うけど、そんなことは言っていられない。これを乗り越えていくしかないのだから」と、課題を挙げつつも、最後はエールを送っていた。

稀勢の里自身は、まだイメージと実際の動きには違いがあることをにおわせた。それでも「(理想を)求めだすと、求めちゃうから」と、理想と現実を見極めながら、今できるベストを尽くす覚悟。報道陣への取材対応の最後には「気持ちいい」とも話した。秋場所(9日初日、東京・両国国技館)まで必死の調整を続けるつもりだ。