大相撲の横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が、試練の序盤戦に向け、非公開で進退の懸かる秋場所(9日初日、東京・両国国技館)前の稽古を打ち上げた。7日、都内の部屋で最終調整。関係者によると四股、すり足などで汗を流したという。稽古後、帰宅の際には、若い衆が乗り込むタクシーに報道陣を近づけず、無言で引き揚げた。夏巡業後、稽古の完全非公開もノーコメントも初。9場所ぶり皆勤へ緊張感を漂わせた。

この日は取組編成会議が行われ、初日が東前頭筆頭の勢、2日目が西小結の貴景勝と対戦することが決まった。勢には過去15勝1敗だが、最後に対戦した昨年名古屋場所5日目は黒星。翌6日目から休場に追い込まれた。貴景勝には昨年九州場所4日目、今年初場所初日と連敗中。通算1勝2敗と負け越している。師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)は「序盤が大事。後半になれば力を出すタイプなので」と話す。現在は横綱として歴代最長の8場所連続休場中。序盤で土をつけられた苦い記憶の残る2人との対戦が決まり、一気に臨戦態勢となっていた。

審判部長で、前日6日に出稽古で稀勢の里が部屋を訪れていた阿武松親方(元関脇益荒雄)も「誰も経験したことのない場所。初日と2日目をどう乗り越えるか」と話した。前日に「しっかり準備できた」と話した稀勢の里。夏巡業から関取衆相手に203番で156勝47敗。稽古通りの力を発揮できるか。復活への挑戦が始まる。【高田文太】