8場所連続休場からの復活を目指す横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が、鬼門の初日に挑む。大相撲秋場所初日を翌日に控えた8日、東京・両国国技館で行われた土俵祭りに4場所ぶりに出席。8場所連続休場中に出場した4場所はいずれも初日黒星で、その後に途中休場した。進退を懸けて臨む今場所でまずは東前頭筆頭の勢を下し、9場所ぶりの白星発進で勢いに乗る。

淡い紫色の羽織をまとった稀勢の里が、本土俵と向かい合った。予定開始時刻より3分早く始まった土俵祭り。正面のたまり席に用意されたパイプ椅子に座り、真剣な表情で土俵を清める神事を見守った。会場を後にする際には、一般公開で集まった観客から「信じてるぞ! 稀勢の里!」「稀勢関、頑張って!」などの声援が飛んだ。

進退を懸けた秋場所だ。「いよいよ始まるという感じ。特に気負いもなく、いい状態で稽古ができた。1日一番しっかり集中してやりたい」。いつも通り、淡々と話した。

だが、はやる気持ちを抑えられなかったのか。田子ノ浦部屋へ戻ると稽古場へ直行した。本場所で使用する紺色のまわしを締め、四股などの基本運動で約30分間にわたって汗を流した。異例ともいえる稽古で場所前最後の調整を終了。1月の初場所以来となる初日を控え、心身の準備は整った。

白星発進が、復活への鍵となる。横綱昇進後、出場した5場所で初日白星だったのは、優勝した17年春場所だけ。残る4場所は初日からの連敗はないものの、途中休場を余儀なくされている。初日に対戦する勢には15勝1敗と合口は良いものの、最後に対戦した昨年名古屋場所で黒星を喫している。さらに3場所連続の全休明けで、少なからず不安は抱えているはずだ。

「しっかりやってきたことをしっかりやるだけ。やるべきことをしっかりやってきましたから、それをやるだけです」と自らに言い聞かせるように話した。約8カ月ぶりに出場する本場所。さまざまな思いを背負って、15日間を全うする。【佐々木隆史】