九死に一生を得るような周囲をハラハラさせた一番をものにし、初日から連勝した横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)の相撲を、協会トップの八角理事長(55=元横綱北勝海)ら関係者も、その粘りを評価した。

押し込まれた後、引かれて泳がされた横綱が、後ろに引いた右足で西の徳俵で残り、逆転の突き落とし。テレビ画面がその一番を見届けた八角理事長は勝負が決まった瞬間、「よう残ったな。いい相撲だった」と開口一番、口にした。「最後、西に詰まった所でよく残った。残ったから貴景勝が崩れた。すぐに(逆転を狙い)突き落とそうとしないで、残そうという気持ちが大事。気迫というより、残るんだという気持ち。必死さだろう」と瀬戸際の横綱の心中を察した。

幕内後半戦の審判長を務めた審判部の阿武松審判部長(関脇益荒雄)も、開口一番に「素晴らしかった」と称賛。「今日の相手は厳しい、やりずらい相手。よく辛抱して残したのと、安易に呼び込むようなはたきに行かなかったのが勝因。大きな一番」と、稀勢の里にとってのターニングポイントになるかもしれない一番とした。場所前には稀勢の里が、その阿武松部屋に出稽古に来て、やはり押し相撲で西前頭6枚目の阿武咲(22)と、気迫あふれる稽古を積み上げた。その様子を思い出すかのように「稽古場では相当、今までの場所前とは違うなと思ってました。(阿武咲相手に上体を)起こされないように意識して稽古していたようで、それが今日の相撲につながったのでは」と分析。得意の左四つではなく、何とかしのいでの勝利に「組み止めるのが一番いいのでしょうが、辛抱して勝つのも横綱相撲だと思う」と今後に期待を寄せた。