大相撲の貴乃花親方(46=元横綱)が25日、日本相撲協会に退職の届け出を提出したことを明らかにした。

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貴乃花親方の退職は、相撲界にとって大きな損失だ。今でも知名度は抜群。本場所中も審判に入ると、親方名をアナウンスされるだけで場内が沸く。現役時代の強さや土俵態度は、同じ時代を生きた親方衆の多くから今も尊敬される。

一方、親方としては疑問に残る行動も少なくなかった。巡業中、白鵬らが稽古を始めると土俵を離れてしまう。不祥事再発防止の研修会など、協会主催行事を欠席する。貴乃花一門時代、仲間のはずの親方衆が出席を促しても、聞く耳を持ってくれなかったという。こんな態度が、協会内で孤立化する原因だった。

退職に至った経緯では、協会にも瑕疵(かし)があったように感じる。だが、親子同然の弟子を手放していいのか。それほど告発状の内容にこだわるなら、なぜ取り下げてしまったのか。貴公俊と日馬富士の暴行は別問題ではないのか。本当に大相撲を愛するなら、情報をオープンにした上で徹底的に話し合えば良かったのではないか。

現役時代があまりに輝かしいだけに、この結末は受け入れがたい。一本気すぎる性格だからこそ大横綱になったが、かたくなすぎて親方としては器用に立ち回れなかった。協会側も角界ならではの寛容さで貴乃花親方を生かす道を探ってほしかった。今回の件で、大相撲に愛想を尽かすファンもいるだろう。貴乃花親方の参謀になりえた元大関貴ノ浪の音羽山親方、貴乃花親方を受け入れる懐の深さがあった北の湖理事長(元横綱)が生きていたなら、と思わずにいられない。【佐々木一郎】