横綱稀勢の里(32)が、在位11場所目で初の「一人横綱」として、大相撲九州場所(11日初日、福岡国際センター)に臨むことが決まった。取組編成会議前日の8日、白鵬、鶴竜の2横綱の休場が相次いで判明。この日、福岡市で行われた前夜祭で早速、一人横綱として土俵入りを披露した。名実共に優勝争いの中心として土俵を盛り上げる。

毎日が結びの一番という初めての経験を、稀勢の里が九州場所で迎えることになる。この日午前に白鵬、夕方に鶴竜が休場することが判明。前夜祭は当初、3横綱の土俵入りが予定されていたが、1人で務めた。九州場所の会場でもある福岡国際センターで、大勢の観衆の前での堂々とした土俵入りに「よっ、日本一!」などと、声援が飛んだ。一人横綱が決定してはいない状況だったが「やるべきことをしっかりやるだけ」と、優勝争いを求められる責任を感じていた。

9月の秋場所で9場所ぶりに皆勤し、10勝5敗。優勝争いに加わることはできなかったが、休場明けで相撲勘が戻りきっていない中、親方衆も横綱審議委員会の面々も合格点を付けていた。昨年初、春と2場所連続優勝したころの力強さを今後、徐々に取り戻してほしいというファンの声も多かった。だが2横綱の休場で、いや応なく優勝争いが義務づけられる状況となったが「やれることはやってきた」と、準備にぬかりはない。

この日の稽古は、福岡・大野城市の部屋で四股などの基礎運動で汗を流した。今月に入り、対戦が予想される幕内上位を中心とした他の部屋の関取衆5人と、それぞれ十数番の三番稽古を消化。6日の出稽古後は「体はいいと思いますし、初日に向けていい調整ができている」と話していた。同日、今場所の目標を「もちろん優勝です」と断言。何よりも気持ちが仕上がっていた。解説者の舞の海氏からも「優勝ですね」と、太鼓判を押されるほど心身の充実ぶりを見せている。

前夜祭で一足早く一人横綱の予行演習も終えた。楽しみな場所になりそうか問われても「しっかりやります」と、気を引き締めた。自分に言い聞かせるように「しっかり」を連発した稀勢の里。一人横綱の重圧という新たな難題も、しっかりと克服して、3度目の賜杯に挑む。【高田文太】