東前頭2枚目栃煌山(31=春日野)が、高安との全勝対決を制した。

立ち合い負けせず、押し込み、最後は左からのすくい投げで大関に土をつけた。三役の常連だった実力者が平幕として1横綱、2大関、2関脇と上位陣総なめの5連勝だ。全勝は小結貴景勝と2人だけ。稀勢の里休場で横綱が消え、荒れる九州場所で“帰ってきた大関候補”が主役に躍り出た。

高安相手に前に出た。栃煌山が立ち合いから圧力をかけ、中に入る。「相手の腰が伸びた」と感じた。流れの中でもろ差しへ。巻き替えられた右を巻き返した瞬間、左からすくい投げを決めた。「欲を言えば、中に入った時に体を寄せていければ…」。過去25場所も三役を務めた男は貪欲だ。

相次ぐケガで番付を落とした。「体に重みがなくなった」とこぼした。西前頭7枚目だった先場所も腰椎椎間板ヘルニアに苦しんだが、つかんだ感覚がある。「腹だけに力を入れるんじゃなく、体全体に芯を通す。まだできたり、できなかったりですが…」。昔の“重み”が戻ってきた。

平幕で不戦勝を含まぬ、初日から5連勝は昨年春場所以来4度目だが、過去3度の番付は前頭10枚目以下。同2枚目の今回と値打ちが違う。1横綱、2大関、2関脇と上位を総なめ。「今日のような我慢が大事。その中で1番でも2番でも納得できる相撲を…」。三役復帰へ、初優勝へ。帰ってきた強者に夢が広がる。【加藤裕一】