小結貴景勝(22=千賀ノ浦)が、大関栃ノ心を押し倒しで破り、4場所連続の勝ち越しを決めた。9日目での勝ち越しは、幕内自己最速。日に日に期待が高まる初優勝に向けて単独トップを守った。3横綱不在の年納めの場所を、幕内最年少の貴景勝が先頭に立って引っ張る。

ぶれない強さを体現するような取り口だった。今場所2度目の大関戦でも、貴景勝が迷いなく押し倒した。立ち合いで前みつを取りにきた栃ノ心を一発ではじき返し、両手で栃ノ心の腹をふた突き。相手のお株を奪うような力強さを見せた。「あんまり覚えていない。胸を借りる気持ちでいきました」。幕内では自身最速となる9日目での勝ち越しをあっさり決めた。

場所前は宿舎から車で約5分の所にある、屋根付きの稽古場で汗を流した。だが場所中は時間の都合上、宿舎近くの空き地に作った仮設の稽古場で体を動かしているが、雨漏り対策は十分とは言えず。昨夜から朝方にかけて雨が降り、稽古場が使えなかったこの日朝は、宿舎前のコンクリート地面の上で軽く体を動かしただけだった。今場所2度目のトラブルだったが「何も気にならない。場所中に強くなるわけない。やるべきことは決まっている」と動揺することはなかった。

順風満帆な1年ではない。新小結で臨んだ初場所は5勝10敗で負け越し、春場所は右足負傷で途中休場。「上半期はよくないことばかりだった。その中で本場所に出られるありがたさを感じている」と実感を込める。師匠だった元貴乃花親方(元横綱)が日本相撲協会を退職し、千賀ノ浦部屋へ移籍して迎えた今場所。目標だった新関脇だけでなく初優勝への期待がどんどん膨らむ。

今場所も残り6日。優勝争いも佳境を迎えようとしている。それでも「15日間の戦いというのは10日目からだと思う。9日目終わっての成績はあてにならない」と緩みはない。荒れる九州場所で着実に前進する。【佐々木隆史】