関取としては16年夏場所以来、15場所ぶりとなる本場所の土俵に上がっている東十両13枚目の豊ノ島(35=時津風)が、勝ち越しに王手をかけた。

過去、幕内で4度対戦(豊ノ島の1勝3敗)している東十両8枚目の旭秀鵬(30=友綱)との一番。相手に突き押しに起こされ徐々に後退。足が西土俵の俵にかかったが、残り腰には余裕があるように見えた。相手の上突っ張りを見逃さず、2本がスパッと入った。特に左は、相手の右脇が完全にバンザイするほど深く、結び目をつかんだ。土俵中央に寄り戻すと「(相手の体勢を)崩しに行こうと思って」(豊ノ島)出し投げのように振って旭秀鵬を後ろ向きに。そのまま送り出し7勝目を挙げた。

相手に攻め込まれた場面は「余裕は自分ではなかった」と言うが、その後の流れは「(2本)入ってから“よしっ”という気持ちで、その後も早かった。柔らかさというか、自分の良さが出た」と相撲の流れ同様、よどみなく話した。

初日から3連勝後、黒星と白星が交互に続く、いわゆる“ぬけぬけ”の星が並んだ。順番でいけば、この日は黒星。その何ともモヤモヤした状況を抜け出し「そのまま(ぬけぬけの状態で)行っちゃいそうな流れを、●●でなく○○で変えられた」と、今場所の分岐点になるかもしれない白星を振り返った。

十両でも下に番付1枚だけ残す13枚目。6勝9敗で場所を終えれば、幕下への再陥落は避けられない。そんな最悪なシナリオを回避し、来場所も十両残留を決める貴重な白星でもあった。「自分も、ちょっとホッとしてますよ。これでもう(幕下には)落ちないと。これで逆に明日から楽しんで相撲を取れる」と安堵(あんど)の様子。2敗の2人を1差で4人が追う、混戦の十両優勝争い。「勝ち越しを決めて星が離れてなかったら、そこは狙っていきたい。まずは勝ち越し。明日(勝ち越しを)決めたら意識していきます」と新たに目標設定。その前にまずは、殊勲賞も受賞した16年初場所(東前頭7枚目で12勝3敗)以来の「関取勝ち越し」を目指す。