小結貴景勝(22=千賀ノ浦)が、東前頭2枚目の栃煌山をはたき込みで下して、三役としては自身初となる2桁勝利を挙げた。単独トップを守り、00年夏場所での魁皇以来となる史上9人目の小結優勝に向けて突き進む。さらに、関脇逸ノ城が負け越して、来年初場所(1月13日初日、東京・両国国技館)での新関脇昇進も決定的となった。

理想としている突き押しの相撲が取れなくても、貴景勝には関係なかった。立ち合いで右を差されたが、もろ手突きではじき返した。一気に突き押そうとしたが、粘る栃煌山。土俵中央付近で互いに何度もぶつかってははじいて距離を取ったが、最後は冷静に左に動いてはたき込んだ。「気持ちでいけてよかった。余裕はないけど、しっかり白星につながった」と話した。

三役3場所目で初めての2桁勝利。初場所での新関脇も決定的となり、初優勝に向けて追い風は吹いている。それでも「ないんだよね本当に。何を言われてもないものはない。明日に向かって準備するだけ」と、高ぶる気持ちは全くない。それどころか「もう終わったので明日に向かって準備するだけ」といつもの言葉で締めた。

大好きな卵を、1日10個以上食べている。特に今場所は温泉卵にハマっているといい、前夜も3個食べた。場所後半になると食欲が落ち気味になるが「食べやすいから」と好んでいて「疲労回復にもなるし体のハリも出てくる」と好調の要因にもなっている。付け人がお湯の温度を75度に保ちながら作ってくれるといい「簡単じゃないよ」と、ありがたがった。

本来なら今日12日目は、2敗の大関高安戦が予想されていた。優勝を占う大一番。それだけに阿武松審判部長(元関脇益荒雄)が「早すぎる」と割を崩した。3横綱不在の一年納めの場所は、22歳の若武者の奮闘に大きな期待がかかっている。【佐々木隆史】