大相撲の前頭貴ノ岩(28=千賀ノ浦)が、付け人で三段目力士の貴大将(23)に暴力を振るった問題で発覚から一夜明けた6日、師匠の千賀ノ浦親方は悲痛の表情を浮かべた。貴ノ岩の暴行問題に「とにかく驚きで、残念の言葉しか出てこない。残念なのと情けないのと、両方です。すみません」と言及。早朝から都内の部屋を囲んだ約40人の報道陣を前に、力ない声で謝罪した。

  ◇   ◇   ◇  

<記者の目>日本中から、ため息が漏れている気がした。「やっぱり」や「結局」。そんな言葉しか思い浮かばないほど、貴ノ岩の暴力には落胆させられた。相撲界は何も変わっていない-。そう世間に思わせたに違いない。貴乃花と日馬富士という2人の横綱が、相撲界を去るきっかけとなった力士による愚行では、その2人も浮かばれないというものだ。

被害者が加害者になる。その傾向はすでに発見されていた。親方や力士はもちろん、行司や呼び出しら、全相撲協会員に聞き取り調査し、元協会員からもアンケートを募る膨大な仕事量をこなした、暴力問題再発防止検討委員会の調査結果に明記されていた。それでも、ある協会員が言った。「どこまでいっても暴力はなくならないと思う。風習として残っているから」。

稽古場では顔を張ることを良しとされ、土俵を離れれば暴力となる。頭で分かっていても、カッとなったら思わず手が出る。その繰り返しだ。それが風習というなら、相撲部屋という共同生活から見直し、稽古と生活を切り分けるしかない。一方で、共同生活を送るからこそ生まれる絆なども希薄になる。親子や兄弟を見るような、大きな魅力をそぎ落とすほどの覚悟で「風習」を変えていかなければいけない、分岐点に差しかかっているのかもしれない。【高田文太】