横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)の引退を“同期の桜”も惜しんだ。再十両2場所目の西十両5枚目の豊ノ島(35=時津風)は、東十両5枚目の若隆景(24=荒汐)を寄り切って2勝2敗とした後、取材に応じ稀勢の里への思いを口にした。

前夜、豊ノ島のスマホにラインで稀勢の里から、引退する旨のメールが入ったという。すぐに自分から電話をかけ「お疲れさまでした」と思いを伝えた。「すっきりした感じで、決心がついたなと思った」。

今場所前には、幕内の琴奨菊(34=佐渡ケ嶽)に声をかけ、2人で田子ノ浦部屋に足を運び出稽古した。初土俵は、高校3年間で相撲を取った後に入門した琴奨菊と豊ノ島が02年初場所で、翌春場所に稀勢の里は中卒で初土俵を踏んだ。初土俵は年上の2人が1場所早いが、相撲教習所は同期の仲。「一緒に食事をする時なんか、いつもこの話が出るんだけど、横綱からは自分たちに早く追いつきたいという気持ちで『2人の背中を見て頑張っていた』と言ってくれてた。でも、すぐに自分が横綱の背中をおうようになってね(笑い)。一番最初に見たときの印象はないのに、毎日、みるみるうちに、1日たつごとに強くなって『何だ、この化け物は』って。琴奨菊と2人で『これは10代関取が誕生するぞ。19歳ぐらいで関取になるぞ』って言い合っていたら、17歳でなっちゃった」。負けじと04年夏場所で同時に新十両昇進。9日目に突き落としで敗れた一番を「つい、この間のことのように思い出す」と感慨にふけった。

年下の“同期”でありながら、雲の上の存在だった横綱は誇りだ。「僕らの時代は、白鵬が化け物みたいな横綱だったり、外国人が強くて日本人が活躍できない時代だった。そんな中、日本人の筆頭として一番、外国人を苦しめた。同じ時代を戦った者として、立派だと思うし、誇りに思う。背負った期待も大きかったと思います」。今後については「親方として立派な力士を育ててほしい」と、ねぎらいの言葉を贈った。